【2026年10月施行】カスハラ・求職者等セクハラ対策が義務化!会社を守るために就業規則を見直しましょう
更新日:9月28日
「お客様から怒鳴られたら、従業員はどう対応する?」
「クレームが長時間続いた場合、店長だけに任せて大丈夫?」
「採用面接で、社員が応募者に不適切な発言をしたら?」
「うちは従業員が5人しかいないから、就業規則は必要ないよね?」
もし、このように考えている経営者の方がいらっしゃれば、ぜひ一度、自社のルールを確認してみてください。
2026年(令和8年)10月1日から、企業に対するカスタマーハラスメント(カスハラ)対策と、求職者等に対するセクシュアルハラスメント(いわゆる就活セクハラ)対策が義務化されます。
特に、飲食店、美容室、ホテル、介護・福祉、小売店、サービス業など、日常的にお客様と接する企業にとっては、決して他人事ではありません。
「クレームは現場で対応するもの」「問題が起きたら、そのとき考えればいい」という会社運営では、従業員を守ることが難しくなる可能性があります。
今回の法改正をきっかけに、会社として「何がハラスメントなのか」「発生したら誰が対応するのか」「従業員をどのように守るのか」まで決めておくことが重要です。
そして、その会社の基本的なルールを整備するうえで重要になるのが、就業規則やハラスメント防止規程などの社内規程です。

1.2026年10月1日から「カスハラ対策」が企業の義務になります
2026年10月1日から、改正労働施策総合推進法により、事業主にはカスタマーハラスメント対策が義務付けられます。
この改正法(令和7年法律第63号)は2025年6月に成立・公布され、改正法により、事業主にはカスタマーハラスメントを防止するための雇用管理上必要な措置を講じることが義務付けられます。
対象となるのは従業員を1人でも雇用しているすべての事業主で、中小企業であっても適用が猶予されることはありません。
カスタマーハラスメント、いわゆる「カスハラ」とは、簡単にいうと、
「顧客等からの言動が社会通念上許容される範囲を超え、それによって労働者の就業環境が害されるもの」
をいいます。
ここで重要なのは、「お客様からのクレーム=すべてカスハラ」ではないということです。商品やサービスについて正当な意見を伝えることまで、カスハラになるわけではありません。
一方で、例えば、
従業員に対する暴言や脅迫
土下座の強要
長時間にわたる拘束
威圧的な言動
同じ要求を何度も繰り返す
不当な損害賠償を要求する
サービスの範囲を大きく超えた要求をする
SNS等で従業員を誹謗中傷する
暴力や犯罪に該当する可能性のある行為
などは、カスハラに該当する可能性があります。
なお、この義務に違反した事業主は、報告徴求命令、助言、指導、勧告、公表の対象となることがあります。
施行までに、会社としての体制づくりを進めておくことが重要です。
2.飲食店・サービス業では「カスハラ」は決して他人事ではありません
例えば、飲食店で次のようなケースがあったとします。
ケース① 長時間のクレーム
料理について不満を持ったお客様が、担当スタッフに対して何度も同じ説明を求め、1時間以上にわたって帰らない。
ケース② 従業員への暴言
「お前なんか辞めろ」「こんな店つぶしてやる」など、従業員を繰り返し侮辱する。
ケース③ 土下座の要求
ミスをした従業員に対して、店内で土下座するよう要求する。
ケース④ SNSへの投稿
従業員の名前や写真をSNSに投稿し、誹謗中傷を行う。
このような場合、「現場の従業員が何とかする」という対応では、従業員に大きな負担がかかります。
現場任せにしないために、会社のルールを決めておく
会社として、
どの段階で店長へ引き継ぐのか
いつ会社本部へ連絡するのか
従業員を一人で対応させないケースは何か
警察への相談を検討するケースは何か
取引停止やサービス提供の中止を検討するケースは何か
といったルールを、あらかじめ決めておくことが重要です。

3.「就活セクハラ」への対策も必要になります
今回の法改正では、カスハラだけではありません。求職者等に対するセクシュアルハラスメント、いわゆる「就活セクハラ」への対策も義務化されます。
なお、正確には、求職者等セクハラについては、改正された男女雇用機会均等法に基づく措置が求められます(施行日は同じく2026年10月1日)。
対象となる「求職者等」には、求人に応募する人だけでなく、採用活動に参加する人や、インターンシップ、教育実習、看護実習などに参加する人も含まれます。
例えば、
採用面接で性的な質問をする
応募者に交際や性的関係を求める
インターンシップ中に性的な冗談やからかいを繰り返す
採用担当者がSNS等を通じて不適切な性的言動を行う
といったケースが問題となる可能性があります。
しかも、現在の採用活動では、面接だけではなく、LINE、SNS、オンライン面談、メールなど、さまざまな手段で求職者と連絡を取ります。そのため、「面接室では問題ないから大丈夫」とは限りません。
会社として、採用担当者や面接担当者に対して、あらかじめ適切なルールを定めておくことが重要です。

4.会社に求められるハラスメント対策とは?
2026年10月からは、会社としてハラスメント問題が発生したときに「その場で考える」のではなく、あらかじめ必要な体制を整えておくことが求められます。
カスハラについては、主に次のような対応が必要になります。
① 会社としての方針を明確にする
「カスハラから従業員を守る」「カスハラには毅然と対応する」という会社の方針を明確にします。さらに、どのような行為がカスハラに該当する可能性があるのか、従業員に周知します。
② 相談窓口を決める
「困ったときに誰に相談すればいいのか分からない」という状態ではいけません。店長、管理職、人事担当者、本社担当者など、相談先を明確にしておくことが重要です。
③ 発生した場合の対応方法を決める
カスハラが発生した場合には、「誰が対応するのか」「事実確認をどう行うのか」「被害を受けた従業員をどう守るのか」「再発防止をどうするのか」まで考えておく必要があります。
④ 悪質なケースへの対応方針を決める
すべての問題を現場スタッフだけで解決する必要はありません。悪質なケースについては、会社として対応すること、必要に応じて専門機関や警察等への相談を検討することなど、あらかじめ方針を決めておくことが大切です。
⑤ 相談した従業員を守る
相談したことを理由として、不利益な取扱いを受けることがないようにすることも重要です。また、相談者等のプライバシーにも配慮する必要があります。
5.だからこそ「就業規則」の見直しが重要です
就業規則やハラスメント防止規程の見直しに加え、相談窓口、対応手順、従業員への周知など、実際に運用できる体制を整えることが重要です。
ここで、経営者の方にぜひ考えていただきたいことがあります。
「自社の就業規則には、ハラスメントについてどこまで書かれていますか?」
「セクハラ禁止」と一言書いてあるだけでは、実際のトラブルに十分対応できない場合があります。
カスハラ対策を実効性のあるものにするためには、
ハラスメントに関する基本方針
禁止される行為
従業員が守るべきルール
相談窓口
相談・申告の方法
会社が行う事実確認
被害者への配慮
再発防止
プライバシー保護
相談等を理由とした不利益取扱いの禁止
行為者への対応
懲戒処分との関係
などを整理しておくことが重要です。
また、従業員が顧客や取引先等に対して不適切な言動を行った場合についても、会社としてどのように対応するのかを検討する必要があります。
つまり、「お客様から従業員を守るルール」だけではなく、「従業員自身がハラスメントを行わないためのルール」も必要なのです。
6.「従業員10人未満だから、就業規則はいらない」は本当に大丈夫?
これは中小企業の経営者の方から、非常によく聞く話です。
確かに、労働基準法では、常時10人以上の労働者を使用する事業場について、就業規則の作成・届出義務が定められています。
では、「従業員が9人以下なら、会社のルールを作らなくてもいい」のでしょうか?
答えは、そう単純ではありません。10人未満の場合、労働基準法上の「作成・届出義務」がないからといって、「会社にルールが必要ない」ということではありません。
例えば、
遅刻・欠勤を繰り返す従業員への対応
無断欠勤
SNSへの不適切な投稿
顧客情報の漏えい
ハラスメント
会社の備品の無断使用
副業
退職時のルール
懲戒処分
服務規律
有給休暇の取得
育児・介護との両立
など、従業員が少ない会社でも、労務トラブルが発生する可能性があります。
むしろ、従業員数が少ない会社では、一人の従業員とのトラブルが会社経営に与える影響が大きくなることもあります。
「うちは5人だから大丈夫」ではなく、「5人だからこそ、会社と従業員がお互いに安心して働くためのルールを作っておく」という考え方が大切です。
7.就業規則は「従業員を縛るためのもの」ではありません
就業規則というと、「会社が従業員を管理するためのもの」と考えている経営者の方もいらっしゃいます。
しかし、就業規則にはもう一つ重要な役割があります。それは、会社を守ることです。
例えば、「これはやってはいけない」「問題が発生した場合は、この手順で対応する」「このような行為を行った場合には、会社として適切に対応する」というルールが明確になっていれば、会社としても対応しやすくなります。
反対に、会社のルールが何も決まっていなければ、「今までそんなルールは聞いたことがない」「人によって言っていることが違う」「社長と店長で対応が違う」という問題につながります。
特に、従業員が増えてきた会社ほど、「社長の頭の中にあるルール」から「会社として共有できるルール」へ変えていくことが重要です。

8.「就業規則を作る」だけでは十分ではありません
就業規則を作成しただけで、ハラスメント対策がすべて完了するわけではありません。
例えば、就業規則に「ハラスメントを禁止する」と書いてあったとしても、「カスハラが発生したら誰が対応するのか」「従業員はどこへ相談すればいいのか」「店長が一人で対応していいのか」「悪質な顧客への対応はどうするのか」が決まっていなければ、実際の現場では迷ってしまいます。
そのため、就業規則・ハラスメント防止規程+社内の運用ルール・対応マニュアルをセットで整備することが重要です。
特に飲食店やサービス業では、現場スタッフが迷わないように、「カスハラ発生時の初期対応フロー」まで決めておくことをおすすめします。
9.2026年10月までに会社が確認しておきたいこと
法改正への対応として、まずは現在の会社の状況を確認してみましょう。
次のチェックリストで、自社の準備状況を確認してみてください。
ハラスメント対策
□ カスハラに関する会社の方針が決まっている
□ カスハラに該当する可能性のある行為を整理している
□ 従業員が相談できる窓口が決まっている
□ 相談を受けた後の対応方法が決まっている
□ 被害を受けた従業員への配慮について決めている
□ 再発防止の方法を決めている
□ 相談者のプライバシーを保護する仕組みがある
□ 相談したことを理由とした不利益取扱いをしないことを周知している
□ 悪質なカスハラへの対応方針が決まっている
採用活動
□ 採用担当者に就活セクハラについて周知している
□ 面接や面談のルールが決まっている
□ 求職者からの相談窓口が決まっている
□ インターンシップ等の受入れ時のルールが決まっている
□ SNSやオンラインでの採用活動についてルールがある
就業規則
□ 現在の就業規則を最後に見直した時期が分かる
□ ハラスメントに関する規定がある
□ 懲戒規定との関係が整理されている
□ 服務規律が現在の会社の実態に合っている
□ SNS利用等に関するルールがある
□ 従業員が少ないからという理由だけで、会社のルール整備を後回しにしていない
一つでも「できていない」「分からない」という項目がある場合は、一度、自社の就業規則や社内ルールを確認してみることをおすすめします。
10.法改正は「面倒な対応」ではなく、会社を守る機会です
今回の法改正を、「また会社の負担が増えるのか」と考える経営者の方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、見方を変えると、今回の法改正は、「従業員を守る仕組みを会社として整える機会」でもあります。
特に人手不足が続く現在、「嫌な思いをしても、お客様だから我慢して」という職場と、「困ったときは会社が守る」という職場。どちらで働きたいと思う人が多いでしょうか。
従業員を守る仕組みを整えることは、結果として、離職防止、人材確保、職場環境の改善、会社の信用向上にもつながります。
そして、その第一歩となるのが、「会社として、どのようなルールで働くのか」を明確にすることです。
まとめ|2026年10月を「就業規則を見直すきっかけ」に
2026年10月1日から、カスタマーハラスメント対策と求職者等に対するセクシュアルハラスメント対策が事業主の義務となります。
特に、飲食店・美容室・ホテル・小売店・介護・福祉・医療・その他のサービス業など、顧客や利用者と直接接する機会が多い企業では、カスハラ対策は決して他人事ではありません。
また、従業員10人未満の会社であっても、「就業規則の作成義務がない」ことと「会社のルールが必要ない」ことは別問題です。従業員を守り、会社を守り、経営者が安心して事業を続けていくためにも、自社の就業規則や社内規程を一度見直してみてはいかがでしょうか。
「うちの就業規則は古いかもしれない」
「そもそも、何を規定すればいいのか分からない」
「従業員が少ないけれど、就業規則を作った方がいいの?」
「カスハラが発生した場合の対応ルールまで整備したい」
このようなお悩みがありましたら、社会保険労務士などの専門家への相談をおすすめします。
三浦社会保険労務士事務所では、就業規則の新規作成・見直しをはじめ、ハラスメント防止規程などの社内規程整備、労務管理に関するご相談まで、中小企業の実情に合わせてサポートしています。
「法律に合わせるためだけの就業規則」ではなく、「実際に会社で使える就業規則」へ。2026年10月の法改正を、会社のルールを見直すきっかけにしてみませんか。
北海道を拠点に、全国の企業からのご相談に対応しています。就業規則の作成・見直し、ハラスメント対策、労務管理について、お気軽にご相談ください。


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