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【中小企業・小規模事業者向け】36協定とは?

三浦社会保険労務士事務所
8月20日
読了時間: 10分

更新日:9月28日

残業に必要な理由・届出・更新・違反リスクを社労士がわかりやすく解説















「従業員を雇ったけれど、36協定って必要なの?」

「うちは従業員が数人しかいないけれど、36協定は必要?」

「去年36協定を届け出たけれど、今年も手続きが必要?」


起業したばかりの経営者や、小規模事業者の方から、このようなご相談をいただくことがあります。


36協定(さぶろく協定)は、従業員に時間外労働や休日労働をさせる場合に重要となる労使協定です。


特に従業員数が少ない会社では「うちは小さい会社だから関係ない」と考えてしまいがちですが、会社の規模だけで36協定の必要性が決まるわけではありません。


この記事では、36協定とは何か、どのような会社に必要なのか、就業規則との違い、届出・更新のポイント、違反した場合のリスクについて、中小企業・小規模事業者の経営者向けにわかりやすく解説します。



1.36協定とは?


36協定とは、正式には「時間外労働・休日労働に関する協定」のことです。労働基準法第36条に規定されていることから、「36(サブロク)協定」と呼ばれています。


労働基準法では、原則として

  • 1日8時間

  • 1週間40時間

を超えて労働させることはできません。


この法定労働時間を超えて従業員に働いてもらう場合や、法定休日に労働させる場合には、あらかじめ36協定を締結し、労働基準監督署へ届け出る必要があります。


つまり、36協定は「会社が従業員に法定労働時間を超える時間外労働や法定休日の労働をさせる場合に必要となる重要な労使協定」と考えると分かりやすいでしょう。














ポイント:厚生労働省も、法定労働時間を超えて労働させる場合には、労働者の過半数代表者等との36協定を締結し、労働基準監督署へ届け出る必要があるとしています。

参考:厚生労働省「働き方改革特設サイト」https://hatarakikatakaikaku.mhlw.go.jp/overtime.html



2.従業員が1人でもいたら36協定は必要?


ここは、起業したばかりの経営者が特に間違えやすいポイントです。


「従業員を1人でも雇ったら、必ず36協定が必要」というわけではありません。


36協定が問題になるのは、会社が従業員に

  • 法定労働時間を超えて働いてもらう場合

  • 法定休日に働いてもらう場合

の2つのケースです。


例えば、会社の勤務時間が「9時~17時、休憩1時間」で、法定労働時間を超える残業が一切ないのであれば、時間外労働のための36協定は必要ありません。


一方、

  • 繁忙期だけ残業が発生する

  • 納期前は従業員に残業してもらう

  • 土曜日や日曜日に出勤してもらうことがある

という会社では、36協定について確認が必要です。


「従業員が何人いるか」ではなく、「法定労働時間を超えて働かせることがあるか」が重要です。従業員数が10人未満でも、時間外労働をさせる従業員が1人でもいれば締結・届出が必要で、人数にかかわらず提出は必須とされています。


会社の状況

36協定

残業ゼロ・休日勤務ゼロ

不要(現状維持でOK)

残業が時々ある

必要(一般条項)

残業+繁忙期の超過が見込まれる

必要(特別条項付き)

休日勤務がある

必要(休日労働の定めを含む)



3.36協定があれば何時間でも残業できる?


もちろん、そうではありません。36協定は「残業させ放題の許可証」ではありません。


2019年4月(中小企業は2020年4月)から施行された働き方改革により、時間外労働の上限には法律上の規制があります。


時間外労働の上限は、原則として月45時間・年360時間とされ、臨時的な特別の事情がなければこれを超えることはできません。

参考:厚生労働省「働き方改革特設サイト」https://hatarakikatakaikaku.mhlw.go.jp/overtime.html














特別条項付き36協定でも超えられない上限

臨時的な特別の事情がある場合には「特別条項付き36協定」を締結することで、一定の範囲内でこの上限を超えることが認められます。


ただし、特別条項を付けた場合でも、以下を超えることはできません。

参考:厚生労働省「働き方改革特設サイト」https://hatarakikatakaikaku.mhlw.go.jp/overtime.html


項目

上限

年720時間以内

時間外労働の年間上限

複数月平均80時間以内

休日労働を含む(2~6か月平均)

月100時間未満

休日労働を含む

月45時間超は年6か月まで

原則の上限を超えられるのは年間6か月のみ


時間外・休日労働が月80時間を超え、疲労の蓄積が認められる労働者から申出があった場合、事業者は医師による面接指導を実施する必要があります。申出がない場合でも、面接指導の実施に努めることが求められます。


つまり「36協定を出しているから、従業員が何時間残業しても問題ない」という考え方は非常に危険です。


健康確保措置を含め、会社には従業員の健康・福祉への配慮が求められています。



4.36協定と就業規則は何が違う?


36協定と就業規則は、どちらも会社の労務管理に関係しますが、役割が異なります。


36協定=時間外・休日労働のルール

36協定は、主に「法定労働時間を超えて働かせる場合や、法定休日に働かせる場合のルール」に関する労使協定です。


就業規則=会社で働くための基本ルール

一方、就業規則は、

  • 始業・終業時刻

  • 休憩・休日・休暇

  • 賃金・退職

  • 職場のルール・懲戒

など、会社で働く上での基本的なルールを定めるものです。


常時10人以上の労働者を使用する事業場では、就業規則を作成し、労働基準監督署へ届け出る必要があります(10人未満の場合は作成・届出義務はありませんが、労働条件や職場のルールを明確にしておくことは労務トラブル防止のうえで非常に重要です)。


比較項目

36協定

就業規則

目的

時間外・休日労働のルール

会社全体の基本ルール

根拠

労働基準法第36条

労働基準法第89条

締結相手

労働者の過半数代表者等

(作成義務は会社)

届出義務

残業させる場合、人数に関係なく必須

常時10人以上で必須


つまり

  • 36協定=時間外・休日労働に関する労使協定

  • 就業規則=会社で働くための基本的なルール

と考えると分かりやすいでしょう。



5.「去年36協定を出したから大丈夫」は要注意


小規模事業者でよくあるのが「去年、36協定を出したから今年も大丈夫だろう」というケースです。


しかし、36協定には有効期間があります。


法律上、期間の長さに上限はありませんが、厚生労働省は「36協定は定期的に見直す必要があることから、有効期間は1年とするのが望ましい」としており、多くの企業では毎年年度ごと(4月1日~3月31日など)に更新しています。














有効期間が満了すると協定の効力は失われるため、定期的に以下のポイントを確認しましょう。


  • ☐ 36協定の有効期間はいつまでか

  • ☐ 次回の36協定をいつ締結するか

  • ☐ 労働者代表は適切に選出されているか

  • ☐ 36協定の内容は現在の働き方に合っているか


届出の様式にも注意

36協定届の様式は、業種や業務内容等によって異なります。届出の際は、厚生労働省または労働基準監督署の最新情報を確認してください。


令和6年4月1日以降に有効期間が始まる場合は新様式を使用します。


主なものは次のとおりです。

参考:東京労働局


種類

一般条項

特別条項

研究開発・建設事業・自動車運転など業種別

医業に従事する医師


会社を設立したばかりの時期は、社会保険・雇用保険・労働保険・雇用契約書・給与計算など手続きが重なり、36協定の届出を後回しにしがちです。


「忙しくなってから準備する」のではなく、残業が発生する前に確認しておくことが重要です。



6.36協定を締結・届出せずに残業させたらどうなる?


36協定を締結・届出せずに法定労働時間を超えて労働させれば、労働基準法上の問題となります。また、協定で定めた範囲を超えて時間外労働をさせることもできません。















罰則(刑事罰)

未締結・未届出のまま時間外労働をさせた場合や、時間外労働の上限規制に違反した場合には、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科されるおそれがあります。

参考:厚生労働省「働き方改革特設サイト」https://hatarakikatakaikaku.mhlw.go.jp/overtime.html


会社として注意すべきチェック項目

会社として注意すべきなのは「36協定があるかどうか」だけではありません。


  • ☐ 36協定を締結しているか

  • ☐ 労働基準監督署へ届け出ているか

  • ☐ 有効期間が切れていないか

  • ☐ 協定で定めた時間を超えていないか

  • ☐ 実際の労働時間を適切に把握しているか

  • ☐ 残業代を正しく計算・支給しているか


さらに、時間外労働をさせた場合には、会社は法律に従って割増賃金を支払う必要があります。


未払い残業代は、賃金請求権として過去の分までさかのぼって支払義務が生じることもあり、経営リスクは小さくありません。



7.労働者代表(過半数代表者)の選出がカギ


36協定を締結する相手となるのが「労働者の過半数を代表する者」(過半数代表者)です。


過半数代表者の選出にあたっては、次の要件をすべて満たす必要があります。

参考:兵庫労働局(厚生労働省)


  • 管理監督者でないこと(労働基準法第41条第2号に規定する監督・管理の地位にある者でないこと)

  • 目的を明らかにしたうえで、投票・挙手などの手続きを経て選出されていること(例:「36協定を締結する者を選出する」と明示して実施)

  • 使用者は、過半数代表者になろうとしたこと・なったこと・正当な行為をしたことを理由に不利益な取扱いをしてはならない


ここで注意したいのが、「会社が特定の人を指名する」ことは要件違反になる可能性があるという点です。


選出は労働者の自由な意思に基づくものでなければなりません。


選出手続きに不備があると、届出済みでも36協定が無効となるおそれがあります。


小規模事業者では「社長が代表者を決めて書面に押すだけ」になりがちですが、投票や挙手など客観的な手続きの記録を残すことが大切です。



8.こんな会社は36協定を一度確認しましょう


次の項目に当てはまる場合は、一度36協定の状況を確認してみてください。


  • ☐ 残業が発生することがある

  • ☐ 繁忙期だけ従業員に残業してもらっている

  • ☐ 休日に出勤してもらうことがある

  • ☐ 去年36協定を出したが、更新した記憶がない

  • ☐ 36協定を誰が管理しているのか分からない

  • ☐ 36協定は一度出せば終わりだと思っていた

  • ☐ 従業員が少ないから36協定は必要ないと思っている

  • ☐ 会社を設立してから、36協定を作ったことがない

  • ☐ 勤怠管理はしているが、残業時間を詳しく確認していない


一つでも当てはまる場合は、現在の労務管理を確認することをおすすめします。



9.まとめ|36協定は「会社が大きくなってから」ではなく、残業が発生する前に確認を


36協定は、単に「労働基準監督署へ提出する書類」ではありません。


会社が従業員に時間外労働や法定休日労働をしてもらう場合に必要となる、重要な労務管理の仕組みです。


特に小規模事業者や起業したばかりの経営者の方は、

「うちは従業員が少ないから関係ない」

と考えず、

「法定労働時間を超えて働いてもらうことがあるか?」

という視点で確認してみてください。


また、36協定だけでなく、雇用契約書・労働条件通知書・勤怠管理・給与計算・就業規則・有給休暇管理・社会保険・労働保険なども含めて、会社の労務管理を一度整理しておくことが、将来的なトラブル防止につながります。


最初は従業員1人・2人でも、事業が成長して人数が増えると後からルールを整備するのは難しくなります。


「まだ小さい会社だから」ではなく、「小さいうちだからこそ」労務管理の土台を整えておきましょう。



三浦社会保険労務士事務所からのご案内


三浦社会保険労務士事務所では、36協定の作成・届出をはじめ、就業規則の作成・見直し、労務相談、給与計算など、中小企業・小規模事業者の労務管理をサポートしています。


  • 「36協定が必要なのか分からない」

  • 「今の36協定で問題ないのか確認したい」

  • 「就業規則も一緒に見直したい」


といった場合も、お気軽にご相談ください。札幌を拠点に、オンラインで全国の企業をサポートしています。




主な参考:厚生労働省「働き方改革特設サイト」/兵庫労働局(厚生労働省)/東京労働局(厚生労働省)

 
 
 

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